君の声が、僕を呼ぶまで
「本当は、苦しんでるのを知ってた。励まして力になりたかったのに、僕は自分の過去に負けてしまったんだ」

飯田君が懺悔するように言った。


「だから、今度は逃げないよ。君の声を聞きたいから」

…え?


「君の名前を呼びたい。君に名前を呼んで欲しい」

桜子ちゃんが、飯田君の言葉を聞きながら、一緒に頷いている。


「もし、君が頑張れるように支える事が出来た時は、名前を呼んでいいかな。もし、君が世界を許せたら、僕の名前を呼んでくれるかな」

切なそうな、飯田君の声。


…彼のその想いを初めて聞いているのに、どこか聞き覚えのある言葉。



「小春」

桜子ちゃんが、私に確認するように聞く。

私は、手の平に貼られたクタクタの絆創膏を見て、一呼吸して、教室のドアに手をかける。
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