君の声が、僕を呼ぶまで
サラは、黒色の毛並みから覗かせる琥珀色に光った目で私の方を見て、ニヤニヤと、

「そうだよ、小春。大好きな雪人(ゆきひと)先生が待ってるんだろ?」

と、もっとわざとらしく、先生の名前を出す。


…お母さんには言葉が通じてないからって、憎たらしい…



朝食の時とは逆。

今は私が機嫌を損ねている。

それでも時計の針は無情に進み、お母さんとサラの味方をする。


「はい、もう出ないと遅刻でーす。駄々っ子はそこまででーす」

お母さんに急かされ、私はカバンを持って、渋々と腰を上げた。


「頑張ってらっしゃい」

私の頭を優しく撫でて、

「ほら、サラも、いってらっしゃいのチュウしてあげて」

と、サラの身体をズイッと私の顔へ近付けた。


「小春も、今日こそ、雪人先生とチュウくらいしてきなよ」

「うるさいなっ」

私が、キッと睨むと、「にゃーん」と首を傾げて鳴く。


何でも話しちゃってるがゆえに、ほんっと憎たらしい…
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