君の声が、僕を呼ぶまで
「俺は塚原先生。君は植木さん。ここでは、ずっとそうだったはずだけど?」

桜子が、口を塞いだまま、目線を彷徨わせる。


「昔、俺が泣いてた時、桜子がこうやって慰めてくれてたのは覚えてる?」

そう言って、桜子のおでこに唇を付ける。


「先生の俺と、従兄弟の俺、どっちならいいの? どっちがいいの?」

桜子が混乱している隙に、畳み込むように、たくさんの疑問を叩き込む。


さっき、カーテン越しに抱きしめた時は、体温が上昇しきっているように感じたが、まだ限界ではなかったらしい。
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