【溺愛症候群】



「……眠いね」


 小さな声で、少しとろんとした目で笑う篠沢。

 ベージュのカーディガンの編目の奥から見える、カーディガンより白い肌。


「うん、やばい」


 奥の肌から少し目を逸らすように、笑い返した。


「コレ食べる?」


 シャカ、と教授に見えないようにタブレットを見せた。


「いいの? 助かる」


 あれくらいの刺激があれば、一時的にでも眠気を遠ざけれる。

 今はとにかく、眠気をなくして講義を聴くのが最重要課題だ。


 俺は通路に低く手を伸ばし、同じく低く手を伸ばした篠沢からケースごと受け取った。




< 45 / 152 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop