too much
「帰り道」side雪彦
「あ、あれ?島本さん…この駅でしたっけ?」

僕はすぐには答えず、ちょっとびっくりしたような顔してるあゆさんに手を振った。
電車は滑るように走り去って行く。



「僕、隣の駅なんです。」

「だったら、なぜ…?」

平川さんは不思議そうな顔をしていた。
ちょっと警戒もしてるかもしれない。
そりゃあ、そうだ。
理由もなく、一つ手前の駅で降りるなんて、やっぱり変だもの。



僕も、こんなことするつもりじゃなかった。
でも…気がついたら降りてたんだ。



それは、多分、平川さんがなにか落ち込んでるみたいに見えたせいだ。
僕の本能が…そんな平川さんを放っておけなかったんだ。
でも…そんなこと、話せない。



だから…



「ちょっと電車に酔ったみたいなんです。
それで、風にあたりながら、ゆっくり歩いて帰ろうかなぁと思って…」

咄嗟に考えた割には、上手い嘘だ。



「え?大丈夫なんですか!?」

「あぁ、大丈夫です。
暖房のせいだったかもしれません。」

そんな会話をしながら、僕達は改札を出た。
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