Not Without Your Sunshine
Chapter 1
私、大野佳菻は日頃から神の存在を信じているわけではないし、今さら神に祈ってもこは無駄だというは重々承知している。何せ席替えの席はもう既に決まっているのだから。しかしどうしても祈らずにはいられない。
──今度こそ前後左右、斜め、とにかくどこでもいいから春斗の近くの席になりますように。
実際に手を組んで祈っているわけではないが、密かに心の中で私は何度も何度もいるかどうかも分からない神に頼んでいる。私以外にも祈っている生徒はきっと他にもいるに違いない。どんなに祈ったところで既に決まっている運命を変えることなどできるわけないのだが。人間、日頃から神を信仰していなくともこのような不安に直面した場合や運に身を任さざるをえなくなった場合には神に頼るのだ。そして不思議にも頼れる存在があると いうだけで少しだけ安心感が生まれる。全く人間とは都合の良い生き物である。
私はつい2日前、中学3年生になったばかりだ。ついに3年生だ。毎年同様に進級したばかりの時はあまり自分が一学年上がったのだという実感が湧かない。なのでついつい職員室で自分の名前と組、学年を言う時に間違えてしまうことが多い。なれるのに最低2週間はかかるだろう。よくある話だが、入学したのがつい昨日のように思える。いつも時が流れるのが速いという話は祖母がするのだが、今では自分でもそのことが実際に感じられるまでになった。
そして卒業するまで席替えも残り2回きりだ。そのたった2回きりのチャンスで春斗の隣になれる可能性など、ないとまでは言わないがとても低い。だから神に頼るしかないのだ。
私は小学五年生から今までの4年間、佐藤春斗に恋している。小学五年生の席替えを機に隣の席になり、始めは毛嫌いするほど嫌いだったのだが気づいたらいつの間にか好きになっていた。私達の席が隣になったにはそれきりであり、中学卒業までにもう一度だけ隣の席になりたいと願っている。
私たちの住んでいる地域は、なんと言うのだろう...交通の便のいい田舎だ。すぐ隣が郊外であるためこれと言ってすごい田舎であるというわけではないが、とにかく人口が少ない。隣町と私たちの町の間に高い壁があり、二つの町には全く違う世界が広がっているといった感じだ。隣町にはお大きなデパートや住宅街があり、私たちの町はどこを見渡しても田んぼと畑だ。そしてたまに田畑の間に家があるといった具合だ。
人口の少ないこの町にある私の小学校は各学年1クラスのみで、私のクラスは人数が28人のみだった。そのためクラス替えもなく、6年間皆同じクラスだった。
< 1 / 7 >

この作品をシェア

pagetop