わたしは一生に一度の恋をしました
 真一は本気か冗談か分からない言葉をわたしに返す。わたしは思わず自分の頬に手を当てた。
 笑っていた真一の顔が突然真顔になった。

「由紀、去年結婚したよ」

 由紀、その言葉にわたしの胸はチクリと痛んだ。


「相手は親父の元部下で、七歳年上の人だよ。俺も高校の時から知っている。由紀にはそれくらい年上の人がいいのかもしれないな」


 わたしはその話を聞き、ただ驚いていた。

 彼女が結婚をするなら、その相手は彼しかいないと思っていたのだ。

「三島さんとは結婚しなかったの?」

「由紀もどこかで分かっていたんだろうな。自分を好きでない相手と結婚して、その結果気持ちが通じ合わなかったらどうなるのか。だからそれで良かったと思っているよ。由紀のためにも、あいつのためにも結婚は同情でするようなものではないから」
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