わたしは一生に一度の恋をしました
「お願いがあるのだけど。ここじゃちょっと」

 真一の申し出は最もだった。まだ相変わらず視線はわたしと真一に向けられていた。
 わたしも周囲の視線に耐えかねていたからだ。

 教室の外に出ると、真一は両手を合わせ、頭をペコリ下げた。

「変なこと聞くけど、ほのかのお母さんのお墓ってこの辺りにあるの?」

「お墓は買っていなかったし、こっちに来たときにお祖母ちゃんの墓に一緒に入れてもらうことにしたよ。藤田家の墓ね」

「そしたらその墓に案内してくれないかな」

「いいけど」

「あと一つだけ。このことは誰にも言わないでほしい」

 誰にもというのは三島さんやおばあちゃんもだろう。
 わたしが頷くと、彼はお礼の言葉を口にした。

 わたしたちは、放課後に待ち合わせることにした。彼はもう一度お礼を言うと、その場を去った。なぜ彼が突然お母さんの墓に行こうと思ったのか分からなかったが、お母さんのお墓参りをしてくれるのに悪い気はしなかった。
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