わたしは一生に一度の恋をしました
 真一は悪戯っぽく笑った。

「責められるかと思った?」

 真一の言葉にわたしは頷く。

「ほのかが悪いわけじゃない。ややこしくしたのは親たちだ。正確には僕の母親と祖父なのだろうけど。僕の家はずっとおかしかった。母親は情緒不安定だし、父親は僕たちを可愛がってくれるが、母親に感心はないみたいだった。まあ、由紀は気がついていないだろうけど」

 わたしはその言葉に驚き、彼を見つめていた。
 彼は目を細めた。

「お墓に案内してもらった日、父親に会わなかった?」

 わたしは真一の言葉に頷いた。

「でもあなたのお父さんはわたしのこと知らないから」

「だろうね。あの日、家に帰ってくるなり酒を飲んでいた。母親が何を言っても無視で。あんな父親を初めて見たよ。もともとお酒はあまり飲まない人だったから」

 わたしはその状況を想像し、胸が痛くなってきた。

「ごめんなさい」

「だから謝るなよ」

 真一はわたしの頭を軽く叩いた。

「ほのかのせいじゃない。絶対自分を責めたりするなよ。もともと父さんにその話をしたのは俺だったんだ。藤田さんの家の娘さんの子供がここに帰ってきて、仲良くなったと。ただの世間話のつもりだったんだけどね」
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