輝。-アノ時アタシタチ-
夜明けの出来事
緊迫した車内で、私は心肺蘇生の処置をとっていた。

鳴り響く機械音

蘇生しない患者

受け入れを拒否する病院

怒鳴りちらす同僚

いつもの光景だ。

救急救命士になって二年が過ぎようとしている。

場数も踏んだし、それなりに色々なケースも見た。

飽きの来ないこの仕事に、疲れこそしていたが力を貰っていた。

「博愛、だめだ蘇生しない」

同僚が小さな声で耳打ちする。

「分かってる。病院に着くまで蘇生処置とって。」

バイタルサインをとりながら指示を出す。

「江口さん、聞こえますか。聞こえたら体のどこでもいいので動かしてみてください」

意識レベルの確認も形だけで。
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