物語はどこまでも!

「愛する者に捨てられたなら、自殺でもすればいいのに」

「それを言えば、あなたは命がいくつあっても足りませんね……」

彼の言葉に首吊りロープを所望する王子様。鎖ならある、と取り出す彼をたしなめていれば、バンッと床の扉が開いた。

「ちょっと、王子いる!?」

誰かと思えば、シンデレラ。昨日とは違い、召使い用の薄汚れた服に、灰かぶりに相応しい煤けた顔。しかして根の綺麗さは失われない彼女は、王子を見つけるなりずかずかと詰め寄って。

「私が間違っていたわ!私の運命の相手は王子、あなたよ!」

告白をした。

あまりにも早い心変わりに驚きを通り越して、呆気に取られる。

どうしたことで?と聞く前に、涙目の魔法使いがシンデレラを追ってやってきた。

「シンデレラ、ひ、酷いじゃないっすか。魔法が切れた途端、『話が違う!』って怒るだなんて。ぼ、僕の魔法は12時になったら消えるって言ったっすよ」

「それは物語上の話でしょ!王子の城に負けないほど大きくかつ、空を飛び下々の者たちを見下せる白亜のお城も!百人以上はいる男前な召使いたちも!古今東西あらゆる料理人に作らせた贅沢の限りを尽くした食事も!一生をかけても着ることが出来ない星々よりも眩いドレスたちも!12時になったら消えるって、どういうことよー!私を愛しているなら、12時の制限なんて関係ないでしょ!」

逆にそこまで出せる魔法が凄いのですが!?

「そ、そう言われても。僕の魔法は何でも出来るけど、シンデレラが舞踏会に行く夜だけで、12時を過ぎたらなくなるのはお話上仕方がないことっすから」

それを何とかしなさいよーと、発狂するシンデレラ。ひとしきり叫び、息を整えたあと。

「やはり、真実の愛はあなたに捧げるべきでしたわ、王子。悪魔の誘惑に負けた私を、どうかお許しになって」

「い、いや、シンデレラ。どうも話を聞く限り、魔法使いの方が贅沢させてくれると思ったけど、当てが外れたから、い、今まで通り確実に贅沢させてくれるボクを選んだとしかーー」

「きゃー、まだ悪魔の誘惑が聞こえますわ。体の奥底に眠ってますの!どうか、王子の清らかな手で私を浄化して下さい。隅々まで、直接、お好きなだけ」

「し、シンデレラ!もう騙されないぞ!そう言って、君は何度か他のーーって、な、どこに口付けようとっ!」

「……、『何度か』?」

独り言に近いことだけど、魔法使いがうんうん泣きながら頷いた。

「し、シンデレラは恋多き女性っすから……。でも、あんな風におねだりされたらどんなワガママも仕方がないと言うか、シンデレラ、スタイル抜群っすから」

「男って……」

と思いつつ、私も昨日、シンデレラの涙に騙された一人だ。魔性という言葉が当てはまるのか、あれよあれよの間に王子様まで陥落していた。

ベッドに伏す王子様からガラスの靴を奪い、履く。私より身長があるためかサイズは合わずとも、無理に足を詰め込んでいた。

「さあ、私が本物のシンデレラですわ!誰も文句はないわね!」

「……」

「シンデレラの話で、足のサイズが大きくてガラスの靴が履けなかった者は自身のつま先を切り落としたそうだよ。どうせ、王子様に嫁げば、もう歩くこともない贅沢な生活を送れると。やる?」

「いいですよ。そこまで怒っていませんから


本物のシンデレラが物語をきちんと進めてくれるならば構わないし。

「あなたも怒っていませんよね」

「君と結婚式を挙げられたから、こういった徒労も悪くないよ」

めでたしめでたし。としておきましょうか。

































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