物語はどこまでも!

「俺は雪木と結婚しても、一生愛すよ。三年でも十年でも、むしろ永遠に夫婦にいられるような方法を探して、雪木と二人っきりで生きていくのが俺の夢」

後ろから私を抱きしめながら夢語る彼に構うことはしない、断じて。この嫁姑戦争をどう止めるかと思ってたけど、そもそもの元凶は現在進行形だった。

「てめえらがそんなんだから、俺が赤ずきんを連れていくんだよ!会えばすぐ赤ずきんを取り合う醜いケンカばかりしやがって!そんな劣悪な家庭環境に赤ずきんを置いていけるか!俺が赤ずきんの面倒を見てやる!」

え、狼が実はまともな性格だったドンデン返しパターンに?

「そうして、赤ずきんと結婚して子どもを八人ぐらい作ってやる!」

やっぱり、狼は変態だった。

嫁姑戦争に狼も参戦しているものだから、のどかな世界が今にもひび割れそうな喧騒ぶり。もうこれ以上の喧騒はないだろうと思っていたけど。ーーああ、これもまた常套句(お約束)か。

「待ちたまえ!」

物語、最後の登場人物。
彼がチッと舌打ちしたところから、誰かは見ずとも分かる。

第一印象から救世主らしい人物に期待寄せるも、引っ込めた涙は流れない。なんせ、もう。

「赤ずきんと子作りをするのは、この僕だ!」

一番こいつがアウトでしたーというお約束(オチ)確定は目に見えていた。

狼曰わく、事実にしろ言い方ってものがある。の言葉を思い出す。本当に言葉を選ぶのって大事だと常々学んだ。

「赤ずきんと世帯を持つのはこの僕である!物語の終盤にそういった結末は書かれていないが、誰が読んでも、赤ずきんを救いし僕が彼女と結ばれるのは自明の理!読者の皆様はきっと、僕と赤ずきんの幸せ家族計画を想像してくださっていることだろう!ーーおっと、うっかりしておったな。赤ずきんが子を設けるためには年齢的に」

「落としていいです」

了解と一つ返事で事を成してくれた彼は、また猟師を深い眠りへ誘ってくれた。

「もう、あなたに任せてもいいですか……」

「暴力を肯定するほど、この場に疲れてしまったんだねぇ。終わったら逆膝枕してあげるから、早めにするね」

なるべく暴力なしでと言いたいが、言わずとも彼は私の思いを汲んでくれるだろう。きっと、さっきみたく狼を捕まえてくれると見ていれば。

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