物語はどこまでも!
(四ー一)
『産まれる時代を間違えた』
そう思ったのはいつの頃からだったか、昔すぎて思い返すも途方がない。
自身の血筋は武術を生業としていた。剣術はもとより、体術も。云わば、人間の最強(理想)を突き詰めきた我が先祖が落ちぶれたのは紛れもなく聖霊という存在が光臨した時からに違いない。
至高の強さも、奇跡(デタラメ)には敵わない。時代の流れに負けたのだと、蔵にしまわれた道場の看板を見ながら祖父は言っていた。
祖父の代で終わった栄光だが、それで我が家が路頭に迷うことはなかった。何せ、聖霊がいる。不幸を良しとしない、神様のような聖霊がいるのだ。恨む心すらも霞となろうほど、それ以上の恩恵を受けてきた。
代々受け継がれてきた武術(強さ)を捨てた故に、時代の流れに乗れてしまったのだ。
穏やかな水面のような、そんな平坦な流れに。
『武力は何も産まないのだよ。なのに、どうしてお前は』
しわがれた声がより、か細くなる。
悲しみか、憂いか。ただひたすらに、『何故だ』と問わずにはいられないか。何にせよ。
『それはあなたが、この看板を捨てなかった理由と同じだろう』
いつか、きっと。必要とされる時が来ると、期待をして。
『そうして、あなたにとって今がその時だ。私は欲しい。この強さを。私が継ごう。この正義を。時代錯誤と後ろ指をさされる程度では、私の信念は揺るがない』
全てはーー
『私は、強くなりたい』
それが、“彼女”の願望。
「く、はははは!」
今まさに左腕が折れようとも、突き進む“勝村野々花”の本質であった。