君と、ゆびきり
夢の中の風
あたしは夢の中で風と一緒に遊んでいた。


広い庭は病院の中庭だ。


走りまわる事ができないから、あたしたちの遊びは専らかくれんぼだった。


隠れるのは花が植えられているプランターの後ろだったり、植木の間だったり。


隠れる場所は限られていたけれど、それは飽きる事なく続けられた。


「次は千里の鬼」


「わかった。60数えるからね」


そう言って目を伏せるあたし。


60秒数えて入る間にどんどん太陽は沈んでいく。


まだ明るかった空はオレンジ色に染まり、そして暗くなっていく。


「58、59、60!」


そう言ってパッと顔を上げた時には、すでに外は真っ暗になっていた。


周囲を見回してみても、なにも見えないくらいの暗闇だ。


「風? 風、どこ?」


闇の中手探りで風を探す。


こんなに暗いなんておかしい。
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