イジワル社長は溺愛旦那様!?

ネクタイを締めるために上着を脱ぎ、ベスト姿だった湊の広い背中。ネクタイを慣れた手つきで締める、血管が浮き出た手の甲。

同時になにか仕事のことを考えていたのだろう、自分の世界に入って、どこかぼうっとして見える黒い瞳。


なにもかもが魅力的すぎて、つらい。

普段はなるべく意識しないようにしているが、ふとした瞬間に湊の魅力に気づいて、心臓がギュンギュンする。

神尾湊は確かに自分の夫だが、会社にいると夫という気がしない。まるで学生時代の憧れの先輩でも見ているような、そんな気がしてくる。

きっとこれは恋人期間がほぼゼロだったせいで、なにもかもが新鮮なのだと思ったが、でもだからと言って五年先、十年先、湊にときめかない日が来るのだろうかと考えると、それは違うような気がする。


(きっと私、死ぬまでずっとこんな感じでドキドキするんだろうな……)


火照った頬にパタパタと風を送りながら、夕妃は足早に秘書室へと戻った。


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