イジワル社長は溺愛旦那様!?

仕事を終え、エレベーターで一階のエントランスに降りると、入り口のロビーに朝陽が立っていた。

寮生なので制服から私服に着替えてきたのだろう。
スマホを眺めているデニムとベージュのPコート姿の朝陽は、背が高く明らかに目立つ。チラチラと社員が見て通り過ぎていくのが、離れていてもよくわかった。


(会社の外で待っててもらえばよかったな……いやでも外は寒いし……)


足早に朝陽に駆け寄った。


「朝陽くん、お待たせ」
「ん」


朝陽はスマホをデニムの後ろポケットにねじ込むと、夕妃に向かって手を出した。


「荷物、持つよ」
「ありがとう」


こういうときの朝陽に対して、遠慮はない。

夕妃は笑って持っていたバッグを差し出して、朝陽と一緒にビルを出た。


「ごはんどこに行く? やっぱり焼肉?」
「いや、今日は肉はいいや」
「へー、それはそれは珍しい……」


昼間に多めにお金を下ろしていた夕妃は、隣を歩く朝陽を見上げた。

同じ血が流れる姉と弟だが、体格はまったく違う。



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