イジワル社長は溺愛旦那様!?
「ううん、大丈夫っ……」
ハッとして顔をあげて、目をこする。
だって今日は“初夜”だ。文字通り、入籍して、夫婦になって、初めての夜なのだ。うかうか寝てなどいられない。
キリッとした表情を作って、湊を見上げた。
「――夕妃、大事な話があるんだ」
「はい……」
いよいよだ。緊張が高まってくる。
「いろいろ考えたんだが、やっぱり夕妃には、俺の秘書になってもらう」
「――えっ?」
秘書?
なぜ、秘書?
たしかにそんな話もしたが、あれは冗談ではなかったのだろうか。
そしてなぜこのタイミング?と、頭の中がクエスチョンマークでいっぱいになる。
「どういうこと?」
すると湊はまじめな顔で、ソファーの上で座りなおし、夕妃と向き合った。
「声が出るようになったら働きたいって言ってただろう?」
「うん」
「いつまでも部屋に閉じこもっていると、精神衛生上よくないし、働くこと自体は俺も賛成だ。だから働くとしたら、事情を知っている閑のところが一番いいかなと思っていたんだが……。あなたがそばにいないとなると、俺が不安で仕事に手が付かない気がするし、ひいては閑にも、あなたにも迷惑をかけることになると思う」