イジワル社長は溺愛旦那様!?

不平や不満を口にせず我慢する癖が身についている夕妃のことを、湊はよく理解していた。

夕妃はコクリとうなずいて、湊の背中に腕をまわし広い胸に頬を押し付けた。


「社員の女の子が、湊さんが本社に戻る前に玉砕覚悟で告白しようかなって、話してて。冗談ってわかってるし、湊さんはそんなことでふらついたりしないって理解してるのに、ちょっとイライラして……おまけに手袋は落とすし……出てきたけど……」
「おまけに舌までヤケドしたし」
「そうなの」


そして夕妃ははあーっとため息を吐く。


「言葉にするとたいしたことないのに、なんとなく引きずってて」
「なるほど。確かにそういう日もある」
「うん」


夕妃の後頭部を湊の大きな手が撫でる。

まるで『いい子いい子』されているような感じで、くすぐったいが、湊がこういうふうに甘えさせてくれると、それだけですべてのストレスが霧散していく気がする。


「――ありがとう」


ぽつりとつぶやくと、湊はクスッと笑って、そのまま夕妃の額に唇を押し付けた。


「夫婦なんだから。お互い様だろ」
「うん……ありがとう」


そして湊は、そのまま夕妃ともつれるようにソファーに倒れこんだ。


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