【完】八月は、きみのかくしごと
第六章:『残された時間』



 トモちゃんに教えてもらって作ったカレーをお父さんは美味しいと言って二杯もおかわりしてくれたことを思い浮かべると口許が緩んだ。

 「なにニヤニヤしてるんだよ。いいことでもあったのか?」

 「あったあった。カレーが上手く出来たこととか?」


 奏多から電話があったのはお盆に入ってからだった。

 ようやく家の手伝いが落ち着いたらしい。


 「へぇ。カレー、ナツが作ったの? 俺も食べたい」

 「残念。もうお父さんが全部食べちゃったから今度ね」


 「チッ。それじゃいつになるかわかんねぇじゃん」

 「あはは。確かに。上手く出来たら持っていくよ」

 
 青葉が作る影の下は涼しくて気持ちいい。
 
 今日は七草神社の裏山に来ている。

 木々で出来た細い道を通って、土で滑りそうな坂を慎重に登り進めていくと、この石段があるのだ。

 
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