チューリップ
サッカーの決勝は俺らの完敗だった。
梨華がいなくなった俺らは、まるでそれまでの健闘が嘘のように弱小チームと化した。

結果としては準優勝だけど、誰1人喜ぶ人はいなかった。





あれから1週間たった今日は、終業式の日でもあり、梨華の学校復活日でもある。


梨華の怪我は思っていたより大事には至らなかったらしく、主に足首の捻挫と額の打撲。あとは擦り傷程度。
だったらしい。



俺は昨日梨華が退院するまで一度も見舞いに行かなかった。


あの日に明かされた逃れようのない真実から必死に逃げていたんだ。


陽介や及川からも避けて、すべてから目を反らしていた。






「はぁーー…


すげぇなぁ…」



俺はまだなにも知らないあの日のように、屋上で寝転がった。



空は笑えてくるほど真っ青で、皮肉られてるような気さえした。



あの日、俺が梨華から離れなければきっと今の俺も事実を知らなかっただろう。




知らないままなにも考えず一緒にいたそれまでと

すべて知ってしまった今



その差は小さいようで、俺にとってはとてつもなく大きかった。
< 110 / 265 >

この作品をシェア

pagetop