社内恋愛をしない理由
あたしとつきあってることになってる相手は、この部署の高城くん。
同い年。
いま、この場にいる。
彼はノリがよくて、飲みに誘われたらことわらない。

あたしは向かい側の端に座る彼を見た。
タバコを指に挟んでいる。


「仲がいいからつきあってると思ってた」

「あたし、高城くんの連絡先も知らないよ」


「そうなの?」と言ってまた驚く鹿股さん。
あぁいうのって、最初に訊かなかったらもうタイミングが無くなる。
いまさら訊けない。
それに、職場に行けば会えるからなおさら。

高城くんの笑い声がする。

あ、もうそろそろかな。
指に挟んでいたタバコが無くなっていた。
あたしはバッグからポーチを取り出した。
中から髪ゴムを出して、向かいの柳井くんに声をかける。


「これ、高城くんに渡して」

「わかりました」


柳井くんは不思議そうな表情をして、席を立った。
それから高城くんに髪ゴムを渡す。
高城くんはその髪ゴムで前髪をちょんまげにした。


「よく見てるね」


鹿股さんが関心したように言う。
あたしはそれに「ヨメだからね」と返した。
< 2 / 7 >

この作品をシェア

pagetop