溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~

 すっかり日が沈んで、夜景が主役になった街並みを彼の愛車から眺めた。
 葛城社長が本気だったとしても、私には桃園さんがいるのだ。彼だって、雨賀碧とキスをしていた。その現実は変わらない。



 20時過ぎには自宅に着き、なんだか拍子抜けする。夜はこれからという時間に、着飾って自宅にいると、どうにも違和感を覚えてしまう。

 思い出したように、桃園さんに帰宅の連絡を入れると、すかさず返事が届いた。


『お帰り。思ってたよりずっと早くてびっくりしたよ。何もされなかった?』


 最後の一文にムッとしてしまうのは、葛城社長の私生活を少しでも知ったからだろうか。それとも、本気だと言われた彼の想いに触れたから?



『ご褒美でお食事をご馳走になっただけですよ。ちゃんと送っていただきました』

『そう。それならよかった。今日明日は会えないけれど、近いうちにまた出かけよう』

『楽しみにしています』

 楽しみに……か。本当にそう思ってるのかと自問自答すれば、ついさっき別れたばかりの葛城社長の顔がポンと浮かんだ。

 たったの約4時間、一緒にいただけなのに。


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