溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
20時になると、部内から同僚の姿が消えていく。
社長とつき合うようになってから、率先して業務を引き受けて残るようになった。もちろん必要以上の残業は問題があるから、加減はしているつもりだけど……。
内線が鳴って、呼出のランプが点滅する。
「はい、広報部 白埜です」
「お疲れさま。葛城です」
実は、彼から連絡が入るのを待っていた。
いつも多忙で、顔を見ることもできない日だってある。
今日だって、10日連続で会えていない。連絡をくれるからいいけれど、やっぱり会って話したい。
だから、彼に会いたいならスケジュールを見て、会えそうな日に目星をつけ、残っているのが得策と思ったのだ。
「まだ残ってたの?他に誰かいる?」
「私が最後です」
「仕事、そんなに残ってるの?大変なら周りの手を借りて分散させるように、部長に話つけるよ?」
「……仕事はいつもと同じくらいです。社長の多忙さには及びません」
「そう、それならいいんだけど」
何気ない話でも、彼の息遣いが聞こえるだけでドキドキと鼓動が速くなる。