誤り婚−こんなはずじゃなかった!−
プロローグ




「お前は今日から俺の妃だ」

「はい!?」

 それは、彼女にとって、予期せぬ出来事だった。

「あなたは、誰ですか?」

 学校から帰宅し、自宅に着いた時のこと。

 18歳の高校生、神蔵(かみくら)あいなが相手の男にそう尋ねてしまうのも無理はなかった。彼とあいなは初対面なのだ。

「俺の名前はシャル。シャル=ペルヴィンカ=カスティだ。長ったらしいからシャルと呼べ。ロールシャイン王国の次期国王になる男だ。お前には、これから俺の城に来てもらう」

「え!?城!?」

 あいなは混乱を極めるしかなかった。


 シャルと名乗る男。

 彼の持つ容姿――。ブロンドの髪に、透き通ったエメラルドグリーンの瞳。あいなは一瞬見惚れてしまった。

 肌もきれいで、かすかにいい香りがしてくる。彼の匂いなのだろう。それは、シャルの身体から放たれるのか、はたまたシャンプーや香水といった外的要因によるものなのかは分からないが、あいなはそれをいい香り、自分好みの優しい匂いだと思った。

 かといって、見ず知らずの男と――しかも、違う国の男と結婚するなんて考えられない。

「そんなこと言われても困ります…!」
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