会いたいとか、さみしいとか
「相田さんってザルですよね」

あたしの飲みっぷりに大島リーダーがやっぱり…と言った雰囲気の視線で見てくる。


「嗜む程度です」

「嗜む程度って」


智樹が呆れたように言う。


「なにか?」

「なんでも」


メニューから顔を上げた智樹は料理を注文する。
ポーカーフェイスが上手くて何を考えてるのか読めない。


「栄さんはほんとに年末年始帰らないんですか」

「もうチケット取れないだろ」

「彼女さんは何も言わないんですか」

「あぁ、そういうやつじゃないから」


話題、変わらず。
ターゲットが智樹になった。
今度はあたしは素知らぬ顔をする番。


「言えないだけかもしれないですよ、ね」

「え。あ、そうだよね」


大島リーダーがこっちに同意を求めてきたため、あたしはドキッとしながら返事をした。


「栄さんの彼女さんはどんな人なんですか」

「んー…。一人にしておけないヤツ」


こんなこと初めて聞いた。
あたしはおかわりのグラスを置いて、智樹と大島リーダーの会話を聞く。


「そう言って一人にしてるんじゃないですか」

「何も言わないから頭にきて」


大島リーダーが大笑いした。


「栄さんも案外、子どもっぽいとこあるんですね」


智樹は照れ隠しでビールを煽る。


「でもさぁ。実際、言わなきゃわかんないだろ。なんか、一人で抱えて。ほんとかわいくない」

「まぁ、そうですけどねぇ」


大島リーダーが智樹の言葉に頷く。
…たしかに。
何も言わないけど。
自分がかわいくないことなんて、わかってるし。
(昔から言われてきたし)


そう思いつつ、なんだか嬉しくて。
顔がニヤけそうになる。
あたしはこのまま素知らぬ顔を続けられないと思い、お手洗いへ立った。
< 8 / 10 >

この作品をシェア

pagetop