今夜、きみを迎えに行く。




「朝から草抜きなんてしてるのか」



祖母の部屋の窓から、顔を出したのは父親だった。



「あ、お父さん」



「葵、なんで庭の草抜きなんてしてるんだ」



心底不思議そうに父親がたずねる。わたしが返事に困っていると、父親はふっ、と笑う。



「そうやって草抜きしてるのを見ると、父さんと母さんが元気だった頃を思い出すよ。やっぱり葵は、母さんの孫なんだな」



父親が、「母さん、葵はやっぱり、母さんによく似てるよ」と、ベッドで眠っている祖母に話し掛けているのが見える。



こんなふうに朝早くから、父親が祖母の部屋をたずねていたことも、わたしはずっと知らずにいた。



自分がずっと住んでいた家の、自分の家族のことなのに、わたしは本当に、何にも知らずに生きてきたのだなと思う。

いや、知らなかったのではなくて、知ろうとしなかっただけのことだ。



「なにもかも諦めてしまう前に、相手のことをまずは知ろうとすること。大切な人のこと、家族のこと」



きっと、シュウならそう言うんだろう。







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