こっち向いて、ダーリン。【改訂版】

俺のたった一つ求めていたもの

「深瀬くん、おはよう!」


──あれから約一週間。

俺は退院し、学校にも通い始めた。


それから数日経った今日。

隣の席が空席じゃなくなる。


久しぶりで突然の逢川の登校に、不覚にも少し驚いてしまった。

もう二度と、来ない気がしていたから。


「…休学はどうした」

「え?何の冗談?」

「てめぇ」


さっきからなんだか騒がしいと思っていたら、皆、こいつが来て騒いでやがったのか。

普段なら森野がひたすら後ろを向いて逢川に話しかけてそうなもんだが、今日は珍しく大人しい。


…にしても、こいつが来ただけで、どうしてこんなにも視界が明るく見えるんだろう。

今日は元から天気が良くて明るいってのに、それとは違う明るさがある。


全ての彩りを、感じることができる。


「いやー、チャイムが鳴るまで皆中々離してくれないもんだから焦ったよ。遅刻するかと思ったー。やっぱり学校は楽しいね。久しぶりだと痛感するよ」


着席し、鞄から教科書を取り出しながら、いつもと変わらない口調で振る舞う逢川。


……何にもなかったような顔しやがって。


安心するじゃねぇか。
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