完璧な彼は、溺愛ダーリン

全てわかっていたから。

最寄り駅に到着すると、私と葛木さんは改札を出てから邪魔にならないように向かい合った。


「ここまでで大丈夫です。ありがとうございます」

「うん。自転車あるんだもんね」

「はい、すぐそこに」

「そっか、ならよかった」


そう言ってから、訪れる沈黙。
離れたくないって思っているから、どう別れを切り出したらいいのかわからない。

それは葛木さんも同じなのか、私の手をきゅっと掴むと口を噤んだ。

終電も近付いているからか、駅には人がほとんどいない。
静かな駅前で黙ったままの私と葛木さん。

傍から見たら、別れを惜しむ恋人同士に見えるのだろうか。


先に口を開いたのは葛木さんだった。


「あ、バイバイする前に……、連絡先聞いてもいいかな」

「あっ、はい！」


そう言ってから慌ててケイタイをカバンから取り出す。
そして、私は取り出してから口で伝えればよかったと後悔した。


目にすぐに飛び込んできたのは、栞から届いたトークの【最低！】の通知だった。
ハッとした私はぎゅっとケイタイを握る手に力が入る。