強引部長の独占ジェラシー

辺りは時が止まったように静かになって、遠くでエレベータが停まる音だけが響いていた。


「川島、」


部長がゆっくりと口を開く。
静かに、冷静に落とされた言葉は想像よりもはるかに悲しいものだった。


「そんな冗談言うな」

「……っ、」


必死で伝えた思いがまさか本気にもされないな
んて。

手を強く握りしめ、泣きそうになる気持ちを抑える。

その時。

ーーブーブーブー。

部長の携帯が鳴った。


「はい。引き出しにあるデータですか？緊急？……分かりました。持って今から向かいます」


電話を切ってさっ、と携帯をポケットにしまった部長は話は終わりだと言うように私に背を向ける。

「気をつけて帰れよ」と最後に伝えられ、背筋の伸びた後ろ姿がどんどん遠くなっていくのを見る。虚しさが増した。


苦しい気持ちを口にしてしまえば、楽になるなんて嘘だった。

口に出したばっかりに相手にもされないんだと気づいてもっと、もっと苦しくて仕方ない。


「言わなきゃ……良かったのに」


目から零れ落ちた涙を隠すように手のひらで拭うと、私は力なく壁にもたれかかったーー。