守りたい、不器用な人。~貴方と始める最後の恋~
あの日、拓海先輩と再会したあの日から少しずつ変わったことがある。


「花蓮」


私の名前を呼ぶのは拓海先輩だった。
お店の前で腕を組みながら立つ彼は絵になっていて思わず見惚れてしまう。

何処までも脳天気な自分の頭が恨めしくて仕方が無い。
彼は毎日と言っていいほど私に会いに来るようになった。
もう2ヶ月が経とうとしているのに。

1つタメ息を吐いて、店に入るために拓海先輩の横を通り過ぎようとする。


「待てよ」

「っ……」


掴まれた腕。
その拍子に持っていた買い物袋を落としてしまう。


バシャッと音を立てて割れたのは恐らく卵だろう。
今日お店で使うのに。
そう思いながらしゃがみ込んで袋を掴む。


「花蓮、話を……」

「話すことなんて何も無い、それは拓海先輩が1番よく知ってますよね?」


先輩の方を一切見ずに地面だけを見つめた。
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