ブラック・ストロベリー





「最終日は皆さん、タクシーでの班行動となりますので会えるのは明日のお昼ごろ、京都駅でお待ちしております」


何台も並ぶ駐車場に、ぴったりと収まってバスは止まった。



ああ、もう、時間だ。



いつもどおり、みんなが順番に降りていく。


あくびをする子、まだ元気に友達と降りていく子、お腹空いたと嘆く子、丁寧にお辞儀をしていく子。




「ヒナセさん、」


きまって、降りるときに名前を呼んでくれるのはミキちゃんだ。



一歩先を歩いていた彼がわたしにぺコっとお辞儀をした。

ミキちゃんから話を聞いたのだろう、少し照れくさそうに先に行くと声をかけて男の子の輪にかけていった。




「イチャイチャしてたね」


ちょっと意地悪に言うとまた頬を染めて、ヒナセさんまでそんなこと言うんですか、と頬を膨らましながら言われてしまった。

でも嬉しそうにニコニコしている。



「ほんっとにヒナセさんのおかげです」


昨日の不安そうな表情から一転、キラキラ輝いた笑顔を見せるから、恋をする女の子は最強なんだと思わせてくれる。



「明日の自由行動の感想も、聞かせてね」

「ちょっとだけですよ?」


友達に囲まれて冷やかしを受けながら、こちらに手を振ってくれるミキちゃんたちを見送る。




生徒を全員見送って車内に戻れば、バスガイド席の道挟んで隣に足を組んで座っている藤さんがいた。



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