鏡の先の銀河鉄道
 「ジョバンニ、ここは降りる?」
 相手の機嫌を伺うようにしながら、質問を投げかける。
 ジョバンニは、黙ったまま首を左右に降るだけだった。彼が降りないと言うのなか、俺もおりない。この世界で頼れるのは、目の前にいるジョバンニだけだから。
 ウミヘビ座につくなり、銀河鉄道に乗っていた人たちが降り始めた。
 用事があって降りたのか、喧嘩している二人を避けるためにおりたのかは分からないが、空いた銀河鉄道の中、俺とジョバンニは開いている席に腰をおろした。
 人がすいた車内でも、あの二人はまだ喧嘩をしていた。
 よく似た顔の2人は、同じような動きと同じような言葉で喧嘩をしながら俺たちの向かいの席に腰を下ろした。
 沈黙しているジョバンニをみているのがつらくて、ついつい言い合いしている二人を見ることにした。
 ジョバンニがどうして、機嫌が悪いのか俺にはわからないけれど・・・怒っているジョバンニを見ているよりは、しらない奴の喧嘩を見ている方が気持ち的にも楽だ。
 「黙れこの馬鹿!!!」
 威勢よく叫び、ミザールから視線をはずしたアルコンと目が合った。
 「あっ!!」
 喜びに似た驚きの声を上げるアルコンというなの少年。
 
 ―ああ、こいつも俺のことを知っているんだ。
 
 銀河鉄道に乗り、自分じゃない誰かを演じている自分。それでも、失敗はしたくないと思ってしまう。
 シリウスに言われた『カムパネルラ』という人物像を思い出す。
 
 明るくて、元気な人。

 「やぁ、ミザール。アルコン。」
 出来るだけ不自然にならないように高めの声で挨拶をする。
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