鐘守りの少女と夢見る王子


やがてマクベスは、ロイドの目を盗んでは白い塔へと向かうようになった。


そして決まって、欠けたステンドグラスの隙間から塔の中を覗き、鐘を鳴らす少女を見つめた。


この美しい鐘の音は、少女の命の響き。


音色は賛美歌のように美しいけれども、真実を知った今はその美しさが残酷だ。



マクベスは少女がおとなしく鐘を鳴らし続けていることが不思議でたまらなかった。

彼女は時折とても辛そうな表情を浮かべる。

その度に、なぜ鳴らすのをやめないのか理解できなかった。

辛いのなら逃げ出したらいいのに。


鎖で繋がれているから?


殺されるかもしれないから?


どうせ鐘を鳴らし続けることで命を落とす可能性もあるのに。

それならいっそ、自分のために精一杯もがいたらいいではないか……


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