千日紅の咲く庭で
「泣くなよ、バカ」

岳は小さく呟いて白い歯を見せて笑う。

さっきまでの儚げで悲しい笑顔とは違う、岳の心からの笑顔。

「だって…」

私の言いかけた言葉は、岳の唇によって消えてしまった。


私の知っている岳とは、いつも意地悪で勝ち気なことしか言わない岳の印象とは全く異なるような、優しくて甘ったるい心のこもったキス。


頭がぼんやりしてきて、思わず岳にしがみつくように抱き着くと、岳は楽しそうに微笑んで唇を離した。


無意識に涙が一筋私の頬を伝うのを、岳の冷たい指先がすくった。

「全部、岳のせいだよ」

なんだか恥ずかしさと嬉しさやいろんな感情が重なって、思わずいつものかわいくない私が顔を出す。

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