花よ、気高く咲き誇れ
「隆弘、開けるよ」
本間家のドアを開けて、おばさんたちにあいさつをして勝手に階段を上り、隆弘の部屋をノックする。
マンガをベッドに寝転がりながら読んでいた隆弘は私の訪問に驚くこともなく。
「葵と先崎千里の密会を見た、ってところだろ?」
「……知ってたの?」
「まぁーな。お前のこと学食で見かけたし。で、その情けない面か」
「……うっさい」
「やめておけよ。葵は。あいつ誰の誘いも乗らないぜ。難攻不落の王子」
一人でウケている隆弘に構っていられない、こいつには頼りたくないと思ったけど高校から一緒なら私の知らない水谷君を知っている。
今の私では悔しいけど、立ち入ることができない部分も隆弘なら知っているかもしれない。
「……あんたが知っている水谷君のこと教えて」
笑いを止めた隆弘の顔には不愉快さを滲ませていた。
「俺はやめておけ、って言ったんだ。お前が女らしくなったところで葵に見向きもされない。だいたい、似合わねー格好して馬鹿じゃねぇの?葵は誰にでも優しく……」
「うるさい!!黙んなさいよ!!あんたに関係ないでしょ!?」
いけない。
興奮しすぎて、さっき引っ込んだ涙が溢れてきた。
こんなみっともない姿を隆弘には晒したくないと、天を仰ぎ見た。