魔法をかけて、僕のシークレット・リリー


ただの謙遜にしては、いささか陰りが多かった。彼の瞳が空虚にも見える。


「あの……私も一つ、お聞きしてもよろしいでしょうか」

「いいよ。なに?」


重苦しい空気を変えたくて、自分から話題を提供する。といっても、私が知りたいのは彼のことではないんだけれど。


「蓮様がお好きなものって、分かりますか?」

「蓮の好きなもの?」

「はい。私、ずっと蓮様に憧れていて……どうにかお近づきになりたいんですけれど、きっかけがなかなか」


適当にこしらえた理由だ。私が一方的にそう思っている、ということなら、不自然ではないだろう。

学校では構うなと蓮様は仰ったけれど、この先絶対に彼と関わらないでいられる保証はない。その時に不審に思われないためにも、私が彼を好いているという理由は好都合だ。


「……君も、蓮なんだね」


ぽつりと彼の口から零れたそれが、やけに寂しそうだった。それなのに彼は微笑んだままで、聞き間違いだろうか、とすら思う。


「蓮の好きなものか……そうだね。植物は結構好きだと思うよ。いつも中庭の花壇とか、通り過ぎる時によく見てるから」

「そうなんですか」

「あとは本かな。童話が好きみたい。意外だよね」

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