言わなきゃわからない?
ドアの開いた音がした。
あたしは一瞬、本当に眠っていたみたいで。
しかし、身体を起こすのも面倒でテーブルに伏せたままでいることにした。

イスを引いた音。
隣りに座った気配。
栄さん…?
フッと香ったコロン。
さっきまで一緒にいた香りじゃない。

身体を起こすとそこには小西さんがいた。
勢いよく起きたことにで、貧血っぽくなった。
目の前がぼやっと暗くなり、ゆがむ。
テーブルに手をついたところに、小西さんが手を伸ばしてきた。


「大丈夫」

「大丈夫です…っ」


距離を取ろうと、イスを引いたら高いヒールのせいで足元がよろける。


「あぶない」


イスが後ろに飛んでいき、あたしは床に尻餅をついた。


「いた…っ」


お尻も痛いけど、よろけたときに足も軽く捻った。
痛みのする左足首に手を伸ばす。
すると、その様子を見た小西さんがしゃがみこんで、あたしに手を伸ばしてきた。


「捻った?」

「平気です」


あたしは小西さんの手は取らずに立ち上がる。
ここに二人きりにはなりたくない。
テーブルを支えにして、ジリジリと小西さんから距離をとる。


「そんなにイヤですか」


小西さんが悲しそうな表情でこっちを見てきた。
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