あなたに捧げる不機嫌な口付け
「失礼な人」


なんでそこで私を試すかな。


本当にその言葉を言ってやりたかったのは、今までそういう短絡的な行動をしてきた人たちだろうに。


過去に何かあったらしいことは掴んだ。


でも悪いけど、私、あなたを甘えさせてあげるほど、甘くもないし優しくもないよ。


はっ、と思いきり鼻で笑えば、険しい表情で顔を上げる。


……単純すぎやしないかな。こんな幼稚な煽りくらい流しなよ。


いい年した大人が女子高生に負けてどうするんだ。


「期待させたみたいで悪いけど、判断材料がそれしかないからって言ったら納得する?」

「…………」


急に大人になったり子どもになったり、諏訪さんはよく分からなすぎる。


第一、性格がそんな捻くれてるのに、ほとんど初対面で顔以外のどこを見るって言うんだ。


何度も眉をしかめ、迷いを瞳にのせて。

その後まぶたを下ろして上げたときには、いろいろを押さえた目をしていた。


「……分かった」

「そう」


諏訪さんが納得しようがしまいが関係ない。納得していないなら私を誘わなければいいんだし。


まだ隣を陣取っているのはそういうことだろうから、伏し目がちな鳶色を覗き込む。


「で?」

「……何」

「まだ私を誘う気はあるのか聞いてるの」


ああ本当に、なんで察せないのかな、この人は。


話したら面白そうだし、せっかく素敵な容姿をしてるのに、それだけが残念だ。
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