あなたに捧げる不機嫌な口付け
えええ、と拗ねてばかりでいっこうに選んでくれる気配が見られないので、もう待たずに適当に私が見繕うことにしよう。


大丈夫、そんなに安いのにはしないから、きっと味は保障できる。


これかな、いやこっち? あ、でもキャラメルは苦手か。

試食できるコーナーがあればよかったのにな。


箱を持ち上げては裏面の商品表示を確認する私に、恭介さんが小さく囁いた。


「たとえ美味しくなくても、俺は祐里恵の手作りのチョコが食べたかったんだよ」


お店の中で悪口を言うみたいになってしまうから、一応遠慮しているようで、珍しく控えめな声量。


膨れてひそひそ騒ぐ恭介さんにジト目を向ける。


「いや、なんで美味しくない前提なの。多分美味しいから」

「じゃあ来年は絶対手作りな?」


証拠を提出しろと言い張る恭介さんに、「分かった分かった、早く選んで」と、若干おざなりな返答をして。


遅まきながら、一本取られたことに気づく。


……ああもう、失敗した。
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