あなたに捧げる不機嫌な口付け
次の次の日。

ちゃっちゃと今日の分の勉強を終わらせる。



英文法を予習する金曜日には、連絡が来ていないかこまめに確認してみた。


不精な私が珍しく返信をするものだから、友人に驚かれた。ひどい。


久しぶりに真面目にチェックしたっていうのに、やっぱり諏訪さんからは特になし。



規則通りの順序を二周した頃、私は最早諏訪さんの存在を忘れ始めていた。




今日は全体の復習をする日、土曜日だ。


単語をガリガリ書き写していた私のスマホが振動した。


タイマーをとりあえず止めてチェックする。


表示されたのは、諏訪さん、の四文字。


「……諏訪さん?」


誰だっけ。


諏訪さん、諏訪さん……諏訪……。


繰っていった面影を掻き集めて、何とか思い描く。


諏訪という知り合いはあの人のみだ。


あの綺麗で妖しい、話し相手。


諏訪恭介さん、だよね。


ああ、うん。


……そんな人もいたな。


私の中ですでに、諏訪さんは色褪せた『はた迷惑な人』だった。
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