あなたに捧げる不機嫌な口付け
諏訪さんの部屋に着いて、即行カヌレを要求した。


「今日はどうする? コーヒー?」

「紅茶」


できる限りさりげなく言ったつもりだったんだけど、相変わらず諏訪さんは聡かった。


「もしかして、インスタントは嫌?」


初日にコーヒーが好きだと申告したくせに、それ以降は全然飲まないのを気にしていたらしい。


「苦手」


言って鞄を置こうとして、


「んー、買いに行くか!」


諏訪さんの発言に鞄を取り落としそうになった。


「は? え、ミルを?」

「あと豆」


鞄を置くのはやめて、驚かせた諏訪さんをまずは止めた。


「そんな急に。結構な出費でしょ」

「大丈夫」


即答されて思わず心中突っ込む。


いや、大丈夫って、いろいろ買い物の計画とかあるでしょう。


さすがに金銭の管理はきちんとしているだろうし、余裕があるのを分かっているのだろうし、こちとらあまり心配はしていないけど。


電化製品って、時期によって値段に格差があるからね。

もしセールしたら後で絶対後悔するくらいにはお安くなる。

週末セールとか、シーズンセールとか、クリスマスセールとか、年末年始セールとか。


本当に大丈夫なんだろうか。
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