王子様たちのシンデレラ(仮)
『_もしもし?』



ドクン……


さっきライブに言っていたとはいえ、3年ぶりの……あたしの知っている陽太だ。




「…っ」




声を聞いただけで涙があふれてきて、それを見ていた蒼先輩はあたしの頭をなでて微笑んだ。



「どうしたんだ?」




『コンビニでなんか食い物買ってくか?疲れてんのに美月の料理食いたくねえだろ』




「ちょっと陽太!!全部聞こえてるからね!?」




『うげ、そこにいたのかよ』




美月ちゃん、まだ料理下手だったんだ……




「いらないよ。なんたって今日はごちそうだからね」




蒼先輩がリビングのテーブルに視線を移す。




あたしとお母さんとお父さんと梨華で協力して作った料理たち。




ピザ、お寿司(これだけはデリバリー)、パスタ、唐揚げ、ケーキ、マカロン……とまあみんなが食べたいものを作ったからジャンルはバラバラ。




『は?美月が作った奴?』




心底嫌そうな声で陽太が言うと、美月ちゃんは暴走しそうになったからあたしと梨華で必死におさえた。




「違うよ。さっき味見したんだけど、懐かしい味だな」




『蒼の母さんか?』




「ぶはっ…ふふ…」



陽太の勘違いがおもしろすぎてあたしはつい吹き出してしまった。




「ちょっ、しゃべっちゃだめだって!」




梨華に口元を押さえられるけど、ツボに入ってしまってどうしようもない。




『彩羽……?』




瞬間、あたしの笑いは止まり、空気が凍り付いた。




「さあ、どうだろう」



蒼先輩がこっちを見て笑った。




もう、言ってもいいのかな?




「陽太」




ぼそっとつぶやくと、電話がブツッと切れた。




「ふふ、彩羽ちゃんもなかなか意地悪だよね」




「蒼先輩こそ」


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