ミツバチジュエル

切断したくない一心で、救急隊員も頑張ったのは認める。
でも、結果的に切ってほしくない場所を切断して修理代金を上げていることを、きっと貴斗をはじめとする救急隊員は知らないだろう……。


そんな事を考えていたら、奥様の口から突然彼の名前が飛び出した。

「前川さんっていう救急隊員さんに指輪を切ってもらった後で『ジュエリー・アイズの渡辺さんっていう店員さんに相談してみてください』って言われました。保育園からの幼なじみなんですってね?」


私のネームプレートを見ながら、奥様がやっと笑顔で話してくれた。

今まで扱ったことのある切断されたリングの何割かは、貴斗が私のところへ送り込んできたということだろう。
やっぱり、そうだったのか……。

彼に関わると、必ず面倒なことが起こっていたのだけれど、それは大人になった今でも変わらない、らしい。


『頼むから、私から離れてよ~~~っ!』


私はこっそり、心の中で悪態をついた。

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