【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-



「、」



ポケットに入れていたスマホが震えたかと思うと、相手は莉胡。

出るかどうか悩んで、「ごめん」とみんなに断ってから液晶に触れた。



「どうしたの。

……いまちょっと電話してる場合じゃないんだけど、」



『っ……まずいことが、わかったの』



寝てる間に出たことを怒ってるのかと思ったら、返ってきたのは想像するよりもずっと切羽詰まった声。

それに思わず喉の奥が引き攣るような感覚を呑み込んで、「なに……?」と問いかける。──良い報告ではないことに、ちゃんと、気づいてた。



『っ……、砂渡って名前が引っ掛かって……

お父さんに聞いたら、砂渡ミケは、わたしのお見合い相手だったの……っ』



「……、お見合い?」




なんでお見合い?と、頭の中で疑問が浮かぶ。

俺と莉胡が付き合ってることは、もはや夏川と七星の両家公認。だからおじさんは俺と莉胡が結婚すると本気で思ってるし、何ならすこしでも早く仕事を学べるようにと、既に色々な情報をまとめた資料をくれたりもしてる。



……なのにどうして、莉胡がお見合いするわけ?



『砂渡は、日本にも世界にも展開してる大手ホテルの親会社なのよ……

もちろんうちのSECとも深い関わりを持ってる、』



「……それはわかるけど、」



『だから親同士は揉めたくないの。

結婚させるつもりはなくてもお見合いさせるってだけで親交は充分深まるし、結ばれなくても円満に終わらせられれば、お互いこの先も関わりやすくなってくる』



「……だから莉胡にお見合いさせるなんてそんなの、」



──大人たちの、都合のいい駒だ。

はじめから断る気でいるお見合いに会社同士が円満でいられるよう無理して参加する必要もなければ、娘だからという理由だけで莉胡をその場に縛る必要もない。



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