イケメン双子と、もれなく『腐』の付く残念女子と。

「ちょっと……地面に足がこすれて痛いんだけど。靴ぐらい履かせてよ。てか放して」

「ああ゛ッ!? フザケんな、このムッツリ野郎。碧羽を穢しやがってッ!!」

 依然として漸に胸倉を掴まれたまま、凜は宙を彷徨い空をかいている。

 ラグの上でリラックスするために、靴下を脱いでいた凜。……碧羽との密着量を増やすために、素足となったのが仇となる。

 凜を掴む漸の拳にアオスジが浮かんでいる。尚更のこと拳に力を込めて、今度は凜を盛大に振り回した。遠心力を借りて、凜はグルグルと良く回る。

「わ~漸ったら、僕とそんなに遊びたいの~? あはは~ってか、これって目ぇ回るよね~」

「お~しっかり回れや! うらあ~!」

 凜は借りてきた猫のように目を細め、漸のされるがままアクロバットに精を出す。……まるで雑技団の、空中演武のようだ。

 その様子を、碧羽は固唾を呑んで眺めている。うっとり邪な視線を向ける彼女の動向は、しかし凜とそう変わらないのではないか? というはなしであった。

 その後も彼らは、碧羽の腐心を満ち昂らせる曲芸を披露したそうな。

「あはは~だんだん楽しくなってきたねえ~」

「フザケろ! はやく地獄へ還りやがれ―――ッ!!」

 ひぐらしの鳴くころ、凜と漸は疲れ切った身体に染み入る、碧羽の弁当を堪能した。

 漸は碧羽の弁当に無事ありつくことができ、凜の幸せな休日はこうして終わりを告げたのであった。
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