10年愛してくれた君へ
11.過去と気持ち


南さんが教育実習に来て5日目。


何事もなく無事に1日を終えた私は、河西くんと並んで教室を出た。


「鵜崎〜最近勉強してるか?」


河西くんは、春兄に家庭教師をやってもらっていることを知っている。


河西くんを誘ったこともあったけれど、『俺も教わるなんて申し訳ない』と断られた。


「うん、案外ちゃんとやってるよ?」


他愛ない話をしながら校門に向かっていると、見覚えのある車が目に留まった。


「あれ?春兄の車?」


私の言葉に河西くんもそちらに目を移す。


遠目だが、あれは確かに春兄のものだ。


決して珍しい車種ではないが、直感的にそう思った。



春兄と何か約束事していたっけ?



不思議に思いながら、春兄の方へと足を進めようとした。その時だった…


私よりも先に、春兄の元へと駆け寄った人物。


「え…?」


南さん?どうして?


「あれってうちのクラスの実習生だよな?何で春兄さんと?」


南さんが春兄の元カノということは、河西くんにも充希にも教えていない。


教えたところで誰も得をしないと思ったから。



車の運転席から出て来たのは春兄。


やっぱりあれは、春兄の車だ。



二人はこちらに気づいていないみたい。


声は聞こえないが、何かを話してそのまま車に乗り込んだ。


助手席には南さん。



あそこは、いつも私が座っていた場所。


もしかして、二人は復縁したの?



考えるだけで胸が痛くなった。


「…鵜崎?」


「…」


私のことを、河西くんがどんな顔で見ているかなんて知らずに。
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