10年愛してくれた君へ
「だから私が教育実習先のクラスであなたを見た時、まさかと思った。当時と比べてあなたは綺麗になったけれど、少し面影もあって。決定的だったのは、あなたの名前よ」


「名前…?」


「春人から、名前が"アイ"っていうのは聞いていたから、私の記憶と重なって、春人の幼馴染の子だって確信したの」


春兄は、南さんと付き合っていた時、彼女に私のことを話したんだ。


じゃあ、私が南さんを知る前よりもずっと前に、南さんは私のことを知っていたってこと?


「あ、あの…」


「何?」


春兄には聞けなかったこと、もしかしたら聞けるかもしれない。


そう思った私は意を決した。



「春兄と別れた原因は?」


「…」


「春兄はフられたって言ってました。あんなに優しい春兄です。何か原因があったはずです」


力強く、しっかり目を見て問いただす。"知りたい"という思いとは裏腹に、告げられる言葉に対する恐怖もあった。



数秒後に南さんの口から出てきたのは、耳を塞ぎたくなるような言葉ばかりだった。
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