エリート外科医の一途な求愛
制御不能の溺愛
大学からちょっと離れた位置まで来ると、高級マンションが建ち並ぶ住宅街エリアがある。
『ここまで来れば大丈夫かな』と言って、各務先生が足を止めて入って行ったのは、それなりの広さがある公園だった。


この近所に住んでいる子供たちにとって、唯一と言っていい屋外の遊び場だろうけれど、さすがにこの時間人気はない。
いくらか揃っている遊具も、ポツンポツンと点在していてちょっと寂しげだ。


敷地内に入ると、各務先生はそれまで握っていた私の手を離し、パンツのポケットに両手を突っ込んで、一歩先を歩いていく。


陽が落ちた後とは言え、この季節これだけ全力で走れば汗を掻く。
ようやく自由になった手でこめかみに流れてきた汗を拭い、私は一歩後から彼の背中を追いながら呼吸を整えた。


「か、各務先生」


ちょっと途切れる声で呼びかけると、彼はほとんど息を乱した様子もなく、私を肩越しに振り返った。
そして、息も切れ切れの私を見て、ブブッと豪快に噴き出して笑い出す。


「ちょっ……」

「いやあ~……まさか君が本当に俺の寝込みを襲ったとは思わなかった。おかげでかなりいい目覚めだったけどね」


そんなことをシレッと言って、またしても肩を揺すり出す各務先生に、私はカッとして顔を上げた。
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