エリート外科医の一途な求愛
目覚めで奪うキス
『番組にはカメラテストの映像が使えますから、それで大丈夫です。休日でも緊急手術に対応するために病院に駆け付ける……ってナレーションを入れれば、むしろ上手く綺麗にまとまりますから』


高瀬さんはそう言ってくれて、撮影は振替日程を押さえることなく終了となった。


『その代わり、また次回もよろしくお願いしますね』


ちゃっかりニコッと笑う高瀬さんに後はお任せして、私は急いで料亭を出る。
各務先生から一足遅れて、私も病院に向かった。


私が病院に着いたのは、事故発生から一時間ほど経過した後のこと。
まだひっきりなしに負傷者が運び込まれる状態で、東都大学医学部付属病院の救命救急センターは、緊迫した慌ただしい空気に包まれていた。


負傷者をのせたストレッチャーが行き交う広い廊下を、ドクターもナースも走り回る。
まるで怒号のような指示と応答が飛び交う中、私はその雰囲気にのまれ、待合の片隅の壁際に身を寄せた。
目の前を駆け抜けるドクターが翻す白衣の裾。
私は固唾をのんで、その場に立ち尽くした。


午後十時を過ぎても、救命救急センター前の玄関には、赤いランプを灯した救急車が数台停まっていた。
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