暗黒王子と危ない夜
「まだ分かってないみたいだから言うけど、相沢さん、そーとう危険な状況に置かれてるよ」
「っえ」
「本多は昔から人に好かれる人間だった。でも、だからこそ敵を作りやすい……っていうか。そのうえ厄介な場所に足を突っ込んで、厄介なものにも手を出して──買った恨みは数知れず」
明らかに低い声で喋るから、余計に不安を煽られる。
「いつ死んでもおかしくないのに本多は懲りない。それどころか楽しんでる。別に、終わってもいいって思ってんだよ。自分に……自分の未来にあいつは興味がないからね」
狂ってるだろ、と付け足して。落とされたのは、長いため息。
「あの馬鹿、1回死ねば治んのかな」
深い怒りを含んだ声だった。
あたしは何も言えず。家に着くまで、本多くんのまだ知らない部分をずっと考えていた。
「送ってくれてありがとう」
ここが家だと伝えると気さくな笑顔が返ってきて、今までの重苦しさは嘘のように消え去る。
「明日からも気をつけて。俺も色々探ってみるし、怪しい人間は見張っとくから」
三成くんが言っていたように、人懐っこい性格なのは違いない。